離婚届不受理申出

日本は世界的に見ても離婚手続きが簡単な国と言われています

離婚届を市区町村役場に出して受理されれば、それで離婚成立です

しかも、離婚届の記載内容に不備がなければ、夫婦の片方だけで役所に行こうと郵便であろうと、友人が持って行こうと受理されます

多くの国が離婚に裁判所を関与させたり、役所への双方の出頭を求めて双方の意思確認していることを考えると、日本の離婚手続きは極めて簡単と言えます

日本で離婚が大変というのは、分け合う財産のことや、子供その他家族等の諸々で、離婚に先立つ「合意」が難しいということだろうと思います

ただ、それ自体は日本に限ったことではありません

ここで言いたいのは、日本の場合、本人の意思が反映されていないかもしれないにもかかわらず、離婚届という紙一枚が受理されれば離婚が成立してしまうということです

外国人のビザ手続きの仕事をしていると、時々「日本人配偶者に勝手に離婚された」という人と遭遇します

外国人本人は離婚届にサインした覚えがないのに

サインの偽造ということもあるでしょうし、外国人で日本語が読めないのをいいことに、日本人配偶者が適当なことを言って離婚届にサインさせた可能性もあります(もちろん違法行為です)

考え得ることは色々ありますが、いずれにしても「本人の意思を反映していない離婚届が役所に提出され、離婚が成立した」ということです

もし、その外国人のビザが日本人との結婚に基づく「日本人の配偶者等」だった場合は、その人がこれから日本に住み続けることができるかどうかという問題も発生し、ビザ期限によっては時間的に切迫した状況になる可能性もあります

しかし外国人配偶者の合意がなくても、一度離婚届が受理されてしまうと、婚姻状態を回復するには裁判所を通じて離婚を無効にしなければなりません。離婚届を出すことの簡便さと比べてその負担は非常に大きく、解決への時間も長期に亘ることとなり、ビザの問題も含め外国人配偶者にとって非常に苦しい状況になります

そこで、離婚手続きの簡便さに乗じた「勝手な離婚」を予防する手段として用意されているのが、今回のタイトルである離婚届不受理申出の制度です ※この制度利用は外国人配偶者に限りません

これを先に役所に提出しておけば、日本人配偶者が離婚届を提出しようとしても役所は受理しないので、勝手な離婚を阻止することができます

そして、一度提出しておけば離婚届不受理申出をした人が取り下げるまで有効です

配偶者が勝手に離婚届を出してしまいそうだと思ったら、利用しない手はないと思います

ただ、離婚届不受理申出の提出は本人が直接役所に行くことを原則としています

弁護士や私たち行政書士でも代理提出はできません

外国人配偶者本人が日本国内にいるなら、(日本語の問題はあるとしても)まだ提出はそれほど難しくないのですが、何らかの事情で外国に住んでいて日本に来ることが難しい場合は、本人が役所に行くことができないので、原則、提出できません(外国にいる日本人なら、在外日本公館に提出することができます)

この場合、例外として自国で離婚届不受理申出を公正証書にすれば、郵送や他人に提出代行してもらうことが可能になります

最近、タイ在住タイ人の方の離婚届不受理申出の提出を代行しました

タイには日本のような「公証役場で公証人が公正証書を作成する」という仕組みがなく、公証資格のある弁護士が日本の公証人の役割を担っています

提出先の区役所に確認した際、当初は「外国弁護士による公証では受理できるか分からない」と言われ、不安がありましたが、無事受理してもらうことができました

「離婚」という家族の現状を大きく変える「離婚届」が、サイン偽造の可能性も検討されることなく郵便でも提出できてしまうことと比べると、現状を継続させる「離婚届不受理申出」のほうが厳格な本人の意思確認を必要とするのは正直腑に落ちませんが、今のところ日本はそういうことになっています

ちなみに、離婚届不受理申出を出した場合、出された側の配偶者にしてみたら、離婚届を出しに行って初めて離婚届が受け付けられない状態になっていることを知り、「えー!マジか!?」ということになります。

過去には、帰国したまま音信不通になってしまった外国人妻と離婚しようと、日本人夫が離婚届を持って役所に行ったところで外国人妻が日本を出国する前に離婚届不受理申出を提出していたことが判明。
「離婚できなかったら再婚もできないよね?俺、どうしたらいいのー!?」というトラブルも実際にありました

そもそも奥さんは音信不通なわけで、離婚届の奥さんのサインはどうしたの?と思ってみたりもしますが

先ほど「配偶者が勝手に離婚届を出してしまいそうだと思ったら、利用しない手はない」と書いたのにこんなことを言うのも何ですが、離婚届不受理申出、正直おかしな制度だなあと思います

個人的には、離婚のときに本人の意思確認をしっかりする仕組みになっていれば、そもそも「離婚届不受理申出」なんて制度は不要だろうと思います

 

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Author

福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)
福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)入管手続専門行政書士(Certified Administrative Procedures Legal Specialists/Immigration Consultant)
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録

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