3年ビザが欲しい(就労ビザ編)

タイトルは就労ビザ編ですが、就労ビザも色々あるので、ここでは私の事務所で対応の多い「技術・人文知識・国際業務」ビザ・「技能」ビザ・「企業内転勤」ビザ、そして「経営・管理」ビザに絞ります。(なお、この4つのビザの3年基準(1年基準・5年基準)は同じです。)

入管の審査要領を見ても、実務を通しての体感としても、いわゆる「身分系」のビザ(日本人や永住者、定住者との結婚や親子関係でもらうビザ)と違い、就労ビザは会社の規模等を重視していることがはっきりしていて、その場合は3年や5年に伸びる基準も明確です。が、規模がそれほど大きくない会社等で働く人に関しては、特に1年から3年になる基準はあいまいです。※ここでは5年から短縮のケースは省略します

そこで、就労ビザのビザ期間1年から3年への伸長の基準について、

【働く会社の規模等が大きいケース】→【働く会社が入管の定めるカテゴリーの1または2のケース】→【ケース1】

と、

【働く会社の規模がそれほど大きくないケース】→【働く会社が入管の定めるカテゴリーの3または4のケース】→【ケース2】

のざっくり2つに分けて見てみたいと思います。※会社のカテゴリーについてはこちらをご覧ください

ケース1

①届出義務を履行している

②学齢期の子供がいる場合は、学校に通わせている

③就労予定期間が1年を超え、3年以内

 

カテゴリー1やカテゴリー2の会社は規模が大きいか、上場企業や役所のように高い社会的信用を得ているところです。ここに当てはまれば①と②の基本的な義務を履行し、③の1年を超えて就労すれば良いので、3年ビザをもらうのは容易と言えます。逆にケース1の基準だけが適用されるなら、カテゴリー3や4の会社で働いている人は、カテゴリー1や2の会社転職でもしない限り3年に伸ばすことは難しいということになります。経営者(「経営・管理」ビザ)であれば、自力で会社をそのレベルまで持って行かなければなりません。

しかし、実際にはカテゴリー1・2の会社以外でも期間3年をもらう人は数多くいます。

それが、次のケース2となります。

ケース2

5年、1年または3か月のいずれにも該当しないもの

 

5年に該当しない場合は、5年だった人が3年に短縮されるということなので、今回のテーマとは関係ありません。関係あるのは、乗り越えるべき1年の基準です。(ここでも3年から1年に短縮される基準は省略します)

1年の基準

①会社がカテゴリー4

②職務上の地位、活動実績、所属機関の活動実績等から、在留状況を1年に1度確認する必要があるもの

③就労予定期間が1年以下であるもの

※会社のカテゴリーについてはこちら

①と③は明確ですが、②はあいまいです。何をもって【1年に1度確認する必要がある】のか?(→どうなれば【入管が1年に1度確認する必要がなくなる】のか?)は、明確に書かれた資料はありません。

そこで、ここでも私の経験から【1年に1度確認する必要がない】と判断されやすくなるポイントを書き出してみます。

①届出義務を履行している

②納税義務を果たしている

③契約通りの給料を受け取っている
(「技術・人文知識・国際業務」ビザ・「技能」ビザ・「企業内転勤」ビザ)

④役員報酬議事録で定めた役員報酬を受け取っている(「経営・管理」ビザ)

⑤就労状況が安定している
(「技術・人文知識・国際業務」ビザ・「技能」ビザ・「企業内転勤」ビザ)

⑥経営状態が安定している(「経営・管理」ビザ)

⑦勤務する会社のオーナー社長が【経営・管理】ビザの外国人の場合、社長が3年以上のビザを持っている
(「技術・人文知識・国際業務」ビザ・「技能」ビザ・「企業内転勤」ビザ)

⑧長期間日本を出国していない

 

①について、ケース2でも届出義務の履行はチェックされています。私の体感として、すべてチェックしているわけではないと思いますが、先の結婚ビザ編でも書いた通り、年収1000万越えでしっかり納税している人でも届出を漏らしていたために1年のままだった事例もあります(会社のカテゴリーは3)。もし忘れていることに気づいたなら、遅くなってからでも届出はしておきたいところです。

②については、提出必須書類の住民税の納税証明書で確認されます。税金の未納がある場合は、3年に伸びることはまずありません。むしろ、3年持っていたら1年に短縮されるのが確実で、滞納の状況や頻度によっては、更新ができるかどうか心配するレベルのポイントになります。なお、ケース1の会社であれば当然に源泉徴収していると思われますので、税金の滞納は発生しないと思われますが、もし滞納があれば同様の扱いとなります。

③④についても提出必須書類の住民税の課税証明書で確認されますが、そこに記載されている収入が契約書や議事録の金額とピッタリになっている必要はありません。が、極端に少ない場合は「どうして少ないのか」を説明する必要があります。このような場合、その外国人が実はビザに適合する仕事をしていなかったり、実はほかの会社で仕事をしている、他の場所での仕事内容がビザに適合している場合であっても、他の場所で働いた分の給料や役員報酬の無申告税金を逃れたり安くするような申告をしている可能性等を疑われ、こうなった場合は、3年持っていれば1年に短縮、場合によっては更新ができるかどうか心配するレベルのポイントになります。

なお、給料が多く支払われている場合は通常問題になりません(当然、税金もその分多く払っているハズ..)

⑤は、簡単に言うと頻繁に転職したり、退職して何もしない期間が度々あったりする状況です。退職して何もしない状態が3か月以内であれば在留状況不良にはなりませんが、それでもこのような人はなかなか3年はもらえません。むしろ転職すると「在留状況を1年に1度確認する必要がある」と判断され、3年持っている人が1年に短縮されることのほうが一般的です。基本的に転職はネガティブに判断されます。ただし、例えば転職先がカテゴリー1や2の会社という場合はステップアップ・キャリアアップの転職と評価され、逆にすぐに3年や5年に伸びることはあります。

⑥「経営・管理」ビザは、更新時に個人的な所得・納税状況を示す証明書(住民税の課税証明書・納税証明書)のほかに、経営している会社の決算書も提出します。ここで「売上が少ない」「赤字が続いている」「債務が大きい」等の状況が読み取れるような場合は経営の安定性が不安視され、3年への伸長は難しくなります。特に売上があまりにも少ない場合、そもそもちゃんと事業を行っていたのか(経営者としてビザに適合した活動をしていたのか)疑われる可能性もあり、更新ができるかどうか心配するレベルのポイントになります。

⑦については、勤務する会社の命運を左右する立場の社長が1年ビザであれば、道理として、その会社での仕事を基盤とする就労ビザの人が社長を上回る3年を得る可能性は低くなります。ただし、社長が1年ビザでも【日本人の配偶者等】ビザなど、身分系のビザであればこの限りではありません。

⑧長期出国している場合は、理由にもよりますが、国際業務などで海外出張が多い職種を除けば、ほとんどの場合、日本に居ない期間は仕事をしていない期間になると思われます。とすると、その間はビザに適合した活動をしていないことになりますし、そのような場合は大抵仕事を休んでいるので収入も少なくなり、税金も少なくなったり非課税になったりします。また、その会社での継続雇用も不安視されます。このような場合は3年への伸長は難しくなるでしょう。3年持っている人であれば、1年に短縮される可能性もあります。
たとえ国際業務で出張が多いとしても、ビザ期間の大半日本に居ないという状況が続くようであれば、そもそもビザが必要なのか(本当に日本での仕事のためにビザが必要なのか?)、あるいは居住地の届出の真実性などについて疑念を持たれることもあり、国際業務だから長期日本にいなくても大丈夫とは言い切れません。入管から、理由書などによる事情説明を求められることもあります。

以上、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務、技能、企業内転勤、経営・管理)ビザが1年から3年になる基準、3年をもらいやすくなるポイントをまとめてみました。

なお、これらのビザには仕事の内容と契約期間によって「3か月」もあり、基準としては「就労予定期間が3か月以下であるもの」とだけ定められています。

「経営・管理」ビザについては、さらに「4か月」もありますが、新規ビザ取得の場合なので、ここでは省略します。

 

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Author

福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)
福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)入管手続専門行政書士(Certified Administrative Procedures Legal Specialists/Immigration Consultant)
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録

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