「技能ビザ」不許可に学ぶ・・入国カードを侮ってはいけません

入国カード・・外国に行くとき、飛行機の中で税関への申告書類と一緒によく配られる紙と言えば、ピンとくる方も多いかと思います。

通常、空港等で事前に記入して入国審査官にパスポートと一緒に提出しますね。

入国カードには、行先の国によって多少の違いはあるものの、氏名や生年月日、パスポート番号に加え、職業や入国目的や宿泊先(滞在先)などを記入するようになっていることが多いかと思います。

日本人が外国へ入国しようとする場合は英語で記入することが多いと思いますが、普段書き慣れていないと、職業などは「俺の職業、英語でなんて書けばいいんだろう?」と慌ててしまうことがあると思います。

で、結局無難で簡単な単語で「TEACHER」などと書いてしまったり・・(注)私のことではありません

大きな声では言えませんが、名前や生年月日、パスポート番号以外は、割と適当に書いてしまっている人が多いのではないでしょうか。

しかし、少なくとも日本の入管は、こういったものもきっちりチェックしています。

先日、ある人の在留資格認定証明書の申請が不許可になった・・日本に住んでいない人のビザを新規で取るための申請が不許可になった・・ので、理由を聞くために、東京入管へ行ってきました。

この申請は私がしたものではありませんが、状況によっては申請したご本人や代理人である会社担当者に同席して不許可の理由を聞くことがあります。

今回の申請について、不許可の理由として事前に書面で通知されていたのは「提出された資料に疑義がある」というものでした。

つまり、申請時に提出した書類の中にニセモノらしいものがある、ということです。(ニセモノと断定しているわけではありませんが、疑わしい場合は不許可になります)
ただし、通知書面では、具体的にどの書類が怪しいのか等、具体的なことは記されていません。

今回は調理師として技能ビザを申請していました。

「調理師」として「技能ビザ」を得るには、10年の経験が必要(※一部例外あり)で、申請の際は、職歴を裏付ける書類(過去から現在の在職証明・在職歴証明などを過去・現在の会社から発行してもらう)で、その経験を立証する必要があります。

ほかにも色々提出する書類はありますが、このビザで「書類が疑わしい」と問題になるのは、大抵「職歴を証明する書類」です。

事前に申請した書類のコピーを見た限りでは、特に怪しいところはありませんでした。

しかし、見た目で怪しくないからといっても油断はできません。

入管が証明書の発行元に電話等して、書類の内容を確認して偽造と判断されることもあります。また、現地の日本大使館経由で調査して「そのような店はない」などと回答を得ていることもあり得ます。

予想していた不許可理由は、上記のような調査によって経歴詐称の証明書を作成していたと判断されたか、過去に日本に就労ビザ等で来たことがあり、この時申請した経歴と今回が違う・・といったところだろうというものでした。

しかし、実際の理由はというと…

この人は、過去に観光で2回、日本に入国したことがありました。2回とも、今回申請した書類では調理師として働いているときです。
にもかかわらず、この人は日本に入国する際に提出した入国カードの職業欄にCOOK(またはそれと同じような職業を意味する英単語)と書かず、2回とも全く違う職業、それもスペルが長く、難しい職業を書いていたのです。

このため、入管としてはこの人が申請書で書いた経歴を信用することができないと結論付けました。

調理師を意味する英単語が難しくて、つい簡単な別の職業を書いてしまったのなら、このような結論にはならなかったかもしれません。しかし実際は逆なので、「入国カードに書いた方が本当のことだろう」と思われたわけです。

今後、この人が再申請をして許可を得るためには、過去に入国カードの職業欄にCOOKと書かなかった理由を入管が納得できるように説明する必要があります。

実際のところ、何年も前のことだと本人が何を書いたか覚えていないこともあり・・そうなると、残念ですがなかなか難しいことになります。

これは日本の入管の話なので、この記事を読む日本人の方は「自分は関係ない」と思われるかもしれませんが、その外国人を雇用しようと準備していた会社としては、せっかく見つけた人材が入社できないことになるので、少なからずダメージを受けます。
このケースでは防ぐのは難しいですが、事前に本人にヒアリングして予防(その人の採用を見送ることも含めて)できたかもしれません。

もちろん、我々日本人が外国のビザを申請することはあるので、適当なことを書いていると、自分が外国に行って仕事をしようとしたとき、不許可の憂き目にあうかもしれません。

他国の入管等が、過去に提出された入国カードなどをどの程度チェックしているか分かりません。しかし、データベース技術が発達している昨今、日本も諸外国も、意外と簡単にこのような申告内容の齟齬が分るようになっていることは肝に銘じたほうが良いでしょう。

ちなみに、日本入国の際に外国人に記入・提出を求めている入国カード(正式名称「外国人入国記録」)は2016年4月にフォームが変わっており、現在は職業欄はありません。

が、日ごろ何気なく提出している書面が、どこでどんな形で影響を及ぼすかわからない例かと思います。

面倒でも、正確に、正直に・・

参考:現書式

Author

福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)
福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)入管手続専門行政書士(Certified Administrative Procedures Legal Specialists/Immigration Consultant)
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録

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