オーバーステイの人と結婚して日本で一緒に暮らしたい②

「オーバーステイの人と結婚して日本で一緒に暮らしたい①」を、2017年11月に投稿し、続きは後日としたまま放置でした。

遅くなりましたが、続きです。

①は、帰国を前提に自ら入管へ出頭して一旦帰国し、1年の上陸拒否期間を経て在留資格認定証明書の交付申請(いわゆる「呼び寄せビザ」)を日本人配偶者を通じて行う「出国命令制度」について触れました。

しかし、

◎一度出国したらもう日本に来られないかもしれない、という恐怖感

◎来られるにしても、審査が厳しくて上陸拒否期間1年といっても実際には長期間来られないかもしれないという不安

◎愛し合う夫婦だから、1年であっても離れ離れになりたくない!

◎2人の間に子供もいる。1年も家族がバラバラになる期間を作るわけにはいかない

・・・などの理由で、出国することなく合法的に滞在できるようになることを切実に願う人もいます。

この場合、①の記事で最後で書いた「自ら入管に出頭し、事情を説明して日本に残してもらえるようお願いする」ことになります。

言葉としては「在留特別許可」といいます。「Special Permission」と呼んでいることもあります。私のお客様(外国人)は、この「Special Permission」という言葉を使っていることが多いです。

さて、この在留特別許可ですが、正直のところ、許可を得るのは年々難しくなっています。

実は、かつては「正規の手続きで在留資格認定証明書の交付を受ける(呼び寄せビザをもらう)よりも簡単ではないか」と言われていた時期もありました。このため、極端な例ですが、観光ビザ等で来日してそのままわざとオーバーステイをして在留特別許可を得ようとする人がいたほどです。
(実際の難易度はケースバイケースでしたが、さすがに観光ビザで在留特別許可を狙うケースでビザをもらうのは過去においても無謀なやり方だったと思います)

しかし、このような風潮が放置されるわけもなく、在留特別許可を得ることは徐々に困難になってきています。

さて、この在留特別許可ですが、それでも上記のような事情があって挑戦するという場合は、やはり入管に出頭して「在留希望の出頭です」と入管の職員に伝えるところがスタートになります。

近年、入管職員は紳士的な対応をする人が増えましたが、在留特別許可を受け付ける窓口は、違反者に対応するところですので、人にもよりますが、かなりきつく当たられることもありますので、心の準備をしておいたほうが良いでしょう。

出頭すると始まるのは「審査」ではなく「取り調べ」です。

ざっくり書くと、オーバーステイするに至った経緯(そもそも日本に何のために、どのようにして来たのか、犯罪者集団とのかかわりの有無も含む)や、オーバーステイ中の生活、そして日本人配偶者との出会いや結婚に至る経緯などが焦点になります。

そこで違反の悪質性結婚の真実性などが吟味され、許可をしても良いケースかどうか判断されることになります。

取り調べは数回に亘って行われ、期間はケースバイケースですが、1~2年程度かかることは覚悟したほうが良いでしょう。
最近許可を得た人は、1年8か月かかっていました。

この方は初めてのオーバーステイではなく、過去の状況からも許可は困難だろうと私自身が思っていたぐらいですので、「許可」なかなかレアな結果だったと思います。(日本人配偶者が一緒に暮らすことを心から願い、それを真摯に入管職員に表現し、伝えていたこと、本人が過去を反省し、真摯に入管と向き合ったことが勝因と思われます)

なお、出頭後は大抵最初の取り調べが終れば帰宅できますが、何度もオーバーステイをしていたり、悪質性が高い場合・逃亡の可能性があると判断された場合などは、そのまま収容されることもあり得ます。

また、1~2年後に結果が出て「特別許可が得られなかった」場合は、日本出国後の上陸拒否期間が最低で5年になります。この点、①の出国命令制度を使うことも選択肢に加え、よく考えることをお勧めします。

ところで、上記は日本人配偶者がいる(日本人と結婚している)ことが前提のように書いていますが、日本人との間に子供がいて、親権があって養育もしているケースなども許可される可能性があります。

逆に、いずれでもない場合(子供もなく、結婚もしていない場合)、許可を得るのはとても難しいでしょう。

過去には20年程度、オーバーステイ以外の法律違反がなく、日本で平穏に暮らしていた人が許可されたこともありましたが、近年、このようなケースは認められない傾向にあります。

もちろん、すべてケースバイケースですので、どのような状況でも「できない」と断言できるものではありませんが、例えるなら「警察署に行って自首するようなもの」ですので、出国命令制度の利用を含め、慎重に検討することをお勧めします。

Author

福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)
福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)入管手続専門行政書士(Certified Administrative Procedures Legal Specialists/Immigration Consultant)
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録

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