離婚したらビザはどうなる⑦(就労ビザへの変更②)

前回は、離婚後に「定住者」ビザへの変更が困難な人について、就労ビザへの変更、特に就労ビザのうち「技術・人文知識・国際業務」ビザと「技能」を「一般的な就労ビザ」としてどのような条件を満たせば可能性があるのか書きました。

今回は、「定住者」ビザも「一般的な就労ビザ」も条件を満たすことができない場合、残る可能性として経営者のビザである「経営・管理」ビザの条件を見てみようと思います。

なお、就労ビザのうち、「特定技能」ビザは、現時点で「建設」「漁業」以外は5年以上日本に継続在留することができません。「介護」は「介護ビザ」に切り替えていけるチャンスがありますが、この3種類以外は、現時点では結婚でもしない限り5年後には結局帰国しなければなりませんので、永続的に日本に住みたいという希望は叶えられません。また、仮にこの3業種のいずれかに挑戦するとしても、試験合格という壁があり、離婚後の残りのビザ期間内に条件を満たせる人は少ないと思われることから、今回は割愛します。

前回まで見た「一般的な就労ビザ」は、離婚時点で本人に学歴ビザが取得し得る実務経験があって初めて検討できるものでした。

しかし、結婚で日本に来る人は、結婚前にビザが取得可能な職種での経験がなく、結婚後もそのような業務に従事した経験もない、そして大学を卒業していない等、条件を満たしていない人が珍しくありません。

そんな人が就労系ビザの最後に検討するのが経営者のビザである「経営・管理」です。

「経営者のビザが最終手段?」と疑問に思うかもしれませんが、このビザは学歴や経験年数が条件となっていないので、変えることのできない過去が条件になる一般的な就労ビザと異なり、本人次第で可能性が見出せるビザとなります。

この「経営・管理」ビザのために重要な要素は次の3つです

1,500万円以上の資本金

2,事業計画を達成するために必要な設備や広さを備え、かつ独立した事業所の確保

3,現実的な事業計画書


☆1,について

全額本人が出資しなくても構いませんが、どのように資金を調達したのか(特に一時的な見せ金ではないかどうか)は疑われやすいところになるので、資金の出どころや送金ルート等を証明する資料は必須と考えた方が良いでしょう。そして、本人の出資が必要な条件ではなく、「いくら本人が出すべき」等の基準はありませんが、本人がどの程度身を切って事業に挑戦しようとしているのかは、前向きに審査してもらうために重要な要素と思われますので、可能な限り本人の自己資金を投じた方が良いと考えます。
また、「とにかく500万円あれば良い」というものではなく、興す事業によっては500万円では足りないということも十分ありますので、実際に必要となる金額をしっかり考えながら資金を集め、資本金としていく必要があります。

☆2,について

本人や第三者の生活の場、あるいは他の事業所と明確に分離されていないような場所では認められません。以前は一戸建ての家で入り口と事務所・生活スペースを分離すれば許可がでましたが、現在はその程度では許可は困難となっています。また、マンションなど集合住宅の一室を事務所用に借りる場合は、賃貸であれば賃貸契約、分譲であればマンションの規約で事業所として使用可能となっていることにも留意する必要があります。

☆3,について

どうして日本で事業をしようと考えたのか、どのように準備をし、どのようにマーケティングをし、どのようなビジネスをすることにし、当面の収支予測などを立てて文書化し、安定的・継続的な経営ができるとアピールするものとなります

上記、かなりざっくりと条件を述べましたが、実際に事業所の準備含め留意すべき点は数多くあり、このテーマの中ですべて書くことは適当ではないので、後日機会があれば、「経営管理」ビザとして独立した記事を書きたいと思います

最後に付記しますと、「経営・管理」ビザは学歴・経歴不問となっていますが、実際には「経営に関する勉強をしたこと」も「経営や営業、マネジメント経験」も全くない人がいきなり日本という外国で事業を興して経営を開始することについて、審査上厳しい目が向けられる傾向があります。このため、学歴・経歴があればそれに越したことはないと言えます。

以上、経営者のビザへの変更の条件を書いてみました

上記のとおり、「経営・管理」ビザは原則・学歴・経歴が不問のビザです。このため、就労ビザをとれない人の駆け込み寺のように使われた過去があります。(実際には本気で経営する気がないのに、ビザのために見せ金で会社を作る等)
このような過去の反省から昨今の審査は厳格で、多額の資金を投じて会社を設立したり事業所を設けたりしても、不許可になるリスクが高いビザと言えますので、やる気が本当にある人にだけお勧めするビザとなります

次回は、「定住者ビザ、無理。一般的な就労ビザも無理。経営者?無理!」・・という人に私が提案できる最後のビザ、「留学」ビザについて見てみたいと思います。

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Author

福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)
福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)入管手続専門行政書士(Certified Administrative Procedures Legal Specialists/Immigration Consultant)
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録

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