日タイのビザ制度比較(7)~離婚・再婚したら?~

前回(7月10日投稿)の「日タイのビザ制度比較(6)~転職したら?~」で、転職したらビザがどうなるのか、日本とタイを比較してみました。
今回は結婚ビザの人が離婚し、さらに再婚する場合について見てみます。
複雑にならないよう、「日本人とタイ人の離婚→再婚の場合」「結婚ビザで滞在中」のケースに絞ります。

日本では、「日本人の配偶者等」ビザ(以降、結婚ビザ)を持っている外国人が日本人と離婚した場合も、ビザの期限が残っている間は、そのまま日本に滞在してもオーバーステイになりません。離婚したからといって残りのビザ期間が短縮されることもありません。もちろん、離婚状態ではビザの期限が来ても更新はできないので、期限までに出国するか、条件をクリアするほかのビザへの変更をしなければなりません。
また、就労ビザの人が退職した場合と違い、結婚ビザの場合、在留状況不良とされるまでの期間も6か月あります。
そして、ビザ期限までに日本人と再婚した場合は、同じ結婚ビザなので、手続きは新しい結婚相手に基づいたビザの更新となります。出国する必要はなく、更新なので更新期(ビザ期限の3か月前からビザ期限まで)に申請すれば良いということになります。
就労ビザでは「退職した場合でも、ビザ期限か退職後3か月の求職活動する時間的猶予がある」と書きましたが、結婚であれば「離婚した場合でも、ビザ期限か離婚後6か月の再婚の時間的猶予がある」と言えなくもありません。ただし、再婚までの経緯によっては結婚の真実性が疑われて更新が不許可になる場合がありますし、女性の場合日タイ双方に再婚禁止期間があることにも注意が必要です。

一方でタイは、離婚したら24時間以内の出国を求められます。就労ビザのようにイミグレーションに行って7日間の猶予をもらえることもありません。
理屈の上では、再婚相手がいる前提で離婚し、24時間以内に再婚手続きが完了できれば、タイに居ながら新しい結婚相手で結婚ビザ更新ができます。
しかし、タイ人と離婚した日本人がタイ人と再婚しようと思えば、日本人側の独身証明等(一般的に当該日本人が離婚したことが記載された戸籍謄本)を取得した上で婚姻要件具備証明書をタイにある日本の在外公館(日本大使館等)で取得する等、必要書類を整えた上で、タイ外務省での認証手続き等を経て、タイの役所へ婚姻届を提出という手順を踏んでいきます。そもそもタイに居ながら離婚したら、日本の在外公館経由で離婚届を出すわけなので、離婚した事実が戸籍に反映されるまで時間がかかり、事実上24時間以内に再婚手続きを完了するのは不可能です

日本では日本人と離婚してもビザ期限まで時間があり、在留状況不良という観点から見ても就労ビザで退職したケース(3か月)より長い6か月の猶予があるわけですが、タイでは事実上離婚したら、就労ビザで退職のケース(7日間)より短い24時間以内に出国するしかないということです。

日本は退職した就労ビザ保持者よりも、離婚した結婚ビザ保持者に対し優しいのですが、タイは離婚した結婚ビザ保持者のほうに対し、より厳しいんですね。

日タイ両国は、自国民と結婚する外国人に対する考え方が根本的に違うと感じます。

日本は、自国民の家族として助け合いながら生涯を日本で暮らす人として厚遇します。仕事の制限をせず(どんな仕事もできる)、永住権取得までの年数も短い(一般の就労ビザの人が10年必要に対し、日本人と結婚していれば3年)です。また、婚姻期間が長い場合は、法定されたものではないものの、離婚しても「定住者」という仕事が自由にできるビザへの変更が認められることもあります。

しかし、タイはタイ人と結婚して結婚ビザを取得しても、それだけでは外国人に仕事を認めません。結婚ビザでも労働許可証(ワークパーミット)がなければ仕事はできず、その取得要件は就労ビザの時と同じです。さらに結婚ビザで滞在していた場合は、離婚すれば24時間以内の退去を求められます。離婚の場合の期間超過は、就労ビザでの期間超過のように罰金だけでは済まず、ブラックリストに載ります。つまり、離婚の場合の期間超過は後々の不利益につながる可能性が高いということになります。タイにおいては、少なくとも法律的には、タイ人と結婚しても、新たな権利を認めたり配慮することはないドライさを感じます。

そう・・少なくとも法律を見る限り、外国人に対しては、タイのほうが日本よりずっとドライで厳しいのです。

 

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Author

福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)
福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)入管手続専門行政書士(Certified Administrative Procedures Legal Specialists/Immigration Consultant)
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録

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