離婚したらビザはどうなる?①(日本人の配偶者等・永住者の配偶者の場合)

明日の岡山入管に備えて岡山入りし、今、ホテルでこの記事を書いています。

今年になってから岡山に来たのは3回目。もともと出張がそんなに多いわけではないのに、しかも大阪や名古屋ではなく岡山に来る機会がこんなにあったことが不思議なわけで、今回の出張が終われば次にいつ岡山に来られるか分かりません。

何度か来るうちに、好きな食べ物、感じの良いお店も見つかって好きになってきたので、そんな風に考えるとちょっと寂しい気持ちになります。

☆☆☆☆☆☆☆

さて、本題です。

最近、立て続けに以下のような相談がありました。

「離婚したいです。離婚したらビザはどうなりますか?」

この問いへの答えは、その人の今とこれまでの状況によって変わります。

その人が永住権を持っている場合は、そのまま日本にいられますので、特に心配することはないでしょう。

問題はそれ以外のビザの場合です。

結婚によってビザを取得していたのであれば、そのビザは離婚や死別によって維持できなくなります。日本で暮らし続けるためには、ほかのビザへ変更するか、同じビザが取れる人と再婚するしかありません。

いずれにしても、その人が持っているビザの種類やこれまでの状況、経験、経済力などによって離婚後にどのようなビザを取り得るのかは変わります。

そこで今回は、「日本人の配偶者等ビザ」・「永住者の配偶者等ビザ」を持っている人が離婚や死別した場合について書いてみたいと思います。

このビザを持っている人が離婚や死別をした場合、通常検討するのが「定住者」ビザへの変更です。

定住者ビザへ変更できれば仕事が自由にできますし、真面目に頑張れば永住権も比較的短い期間で取得の可能性がありますので、とても安定度の高い状態で日本で暮らし続けることができることになります。

特に日本国籍の子供がいて、かつ親権・監護権を持っていれば許可される可能性が高いので、このような人は定住者ビザへの変更の方向で進めていっても良いでしょう。

問題は子供がいない場合です。

このケースで得た定住者ビザを俗に「離婚定住」と呼んでいますが、では「どうなれば(どうすれば)離婚定住を得ることができるか」という基準は曖昧です。

入管の審査要領を引用しようと思いましたが、かえって混乱しそうなので、審査要領の内容と私の経験などを踏まえて書いてみます。

一定以上の期間、「正常な婚姻関係・家庭生活」を日本で営んでいたこと

②生活していけるだけの資産又は技能を有すること。

③公的義務を履行していること又は履行が見込まれること

④それまでの在留状況が良好なこと

 

①について

「一定の期間」とはどれぐらいの期間なのか?

私が駆け出しのころ、ある大ベテランの先生の研修会でお聞きした年数は「6年半で安全圏」でした。

これはあくまで「安全圏」の年数であって、必要な年数ではありません。先生の経験や情報交換から「6年半あればほぼ大丈夫だろう」ということです。

では最低ラインはどれぐらいか?

これは一般に3年と考えられています。

実際、結婚2年半で日本人配偶者と死別した人は不許可になっています。この方は相続で日本に家を所有し、遺族年金も受給していることを主張したようですが、この部分はこのビザを得る上で、プライオリティはそれほど高くありません。

このあたりは個別の事情によるので、少しでも3年に満たなければダメということではありませんが、3年あれば必ず許可されるというものではありません。先の先生が安全圏を「6年半」と言ったことからも分かるように、この年数は長いほど許可率が高くなると言えます。

そして、私は3年で離婚された場合は非常に怖い申請になると考えています。

ご本人の日本滞在の状況(本当に夫婦として助け合ってきたと信じられるかどうか・納税その他の義務を果たしてきたか)や定着性(長期間、日本を離れている期間があったかどうか)、離婚の理由(やむを得ない事情があったかどうか)などを勘案して判断されるものと思われ、これらの項目に弱いところが少しでもあれば、3年、あるいは3年に近い年数での申請はハイリスクになると考えます。

正直、私は結婚期間3年という人のご依頼をお受けしたことはありません。

私がお受けした中で許可の最短は4年弱です。
しかし、繰り返しになりますが、これは「4年あれば大丈夫」という意味ではありません。

次に「正常な婚姻関係・家庭生活」って何だ?という話です。

これは、私は「夫婦が同居していたこと」が一つの目安と考えています。つまり、別居期間が長い場合は定住者ビザへの変更が不許可になる可能性が高くなるということです。

実は、入管の審査要領には以下の記述があります。

正常な婚姻関係・家庭生活」は,通常の夫婦としての家庭生活を営んでいたことをいう。したがって,別居していた期間があっても,夫婦としての相互扶助,交流が継続して認められれば,これに該当する。

 

これだけ読むと、別居していてもチャンスはありそうです。
しかし、別居しながら「夫婦としての相互扶助,交流が継続していた」ことを入管に納得してもらうのはなかなか大変です。

思いつくのは、夫婦のどちらかが病気やけがで長期入院していた場合などでしょうか。

しかし、過去の事例として、日本人夫と死別したものの直前1年ほど一時帰国していた人は婚姻期間が8年以上ありましたが不許可となっています。夫が入院していたとはいえ、その間、夫の看病をしていたのではなく、ずっと帰国していたのでは「正常な婚姻関係・家庭生活があった」とは認められないということですね。

また、時々ある話として、日本人(または永住者)である夫(妻)が刑務所に入っていたために別居状態だった期間についてですが、これは「正常な婚姻関係・家庭生活」とは認められないという認識です。

以前、婚姻期間4年半離婚前の1年別居、その前も合計で半年ほど一時帰国期間という人の離婚定住を申請しました。
その人は別居理由として、「日本人配偶者がうつ病のため実家に戻ったが、配偶者の両親からそもそも結婚に反対されていたため配偶者の実家で一緒に住むことができなかった」という事情を説明しましたが、「正常な婚姻関係・家庭生活」「日本への定着性」双方が認められないとして不許可でした。(婚姻同居期間は都合3年)

また、婚姻期間は「日本で」の婚姻期間です。

婚姻期間が10年あっても、8年海外で暮らして、その後日本に夫婦で来日し、2年後に離婚した場合は2年と考えます。(注:単純な引き算で決めるわけではありません)

また、婚姻期間が10年あり、日本での婚姻期間が5年あっても、最初の5年が日本で残りの5年が日本国外(直近の5年は日本にいない)であれば許可を得るのは困難でしょう。

離婚定住は、日本人や日本永住者と家族となって日本に住むために自国等の生活基盤を捨て、一定の時間が経過して日本に生活基盤ができ、自国等の生活基盤の回復が難しくなった人のために人道的な配慮で許可する主旨なので、「日本に生活基盤がない(日本への定着性がない)」あるいは「外国に生活基盤がある」場合は人道的な配慮は不要だからです。

①についてまとめると、

夫婦が同居して助け合って暮らしている期間が3年以上から可能性がある。ただし3年はハイリスクで期間は長ければ長いほど許可率は高くなる

ということになろうかと思います。

長くなったので、続きはまた今度。

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Author

福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)
福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)入管手続専門行政書士(Certified Administrative Procedures Legal Specialists/Immigration Consultant)
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録

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