日タイのビザ制度比較(5)~タイはビザ変更できない?~
※内容に誤りがあったため、修正して再投稿しています(2020.7.27)
これまで何度も書いたように、日本では、外国人が日本国内で従事する仕事の内容や滞在目的などを変えた場合は、その仕事内容や滞在目的に合うビザに変更しなければなりません。
事例1:「技術・人文知識・国際業務」ビザでマーケティングの仕事をしていたが、大学へ転職して大学教授になった
→「教授」ビザへ変更しなければなりません(または一度出国して「在留資格認定証明書(COE)」からビザ取り直し)
事例2:「留学」ビザで大学で勉強していたが、通訳翻訳者として就職した
→「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更しなければなりません(または一度出国して「在留資格認定証明書(COE)」からビザ取り直し)
事例3:「技術・人文知識・国際業務」ビザで通訳の仕事をしていたが、日本人と結婚したので会社を辞めて主婦になった
→「日本人の配偶者等」ビザに変更しなければなりません(または一度出国して「在留資格認定証明書(COE)」からビザ取り直し)
※結婚後も同じ仕事を続ける場合は、「技術・人文知識・国際業務」ビザのままでも構いませんし、「日本人の配偶者等」ビザに変更しても構いません。「日本人の配偶者等」ビザはどんな仕事も可能であるため。
事例4:日本人と結婚し、「日本人の配偶者等」ビザで滞在していたが、離婚したのでシステム開発会社にシステムエンジニアとして就職した。
→「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更しなければなりません(または一度出国して「在留資格認定証明書(COE)」からビザ取り直し)
上記のように、日本では事あるごとに条件をクリアすることを立証する書類を入管に提出してビザ変更をしなければなりません。確かに面倒ですし、そのたびに「入管が変更を許可しなかったら、新しい仕事に就けない。日本に居られなくなるかもしれない」と不安にもなります。しかし、いずれも日本に居たまま手続きが可能です。
では、タイはどうなのか?
滞在目的によってビザの種類が分かれているのはタイも同じです。しかし、持っているべきビザが変わる場合の手続きは異なります。
〇ノンイミグラントED(留学)からの変更:不可
〇ノンイミグラントO(結婚)からノンイミグラントB(就労)への変更:手続きに必要な期限が残っていて、労働許可証(ワークパーミット)が取得できれば可能(※離婚した場合は24時間以内に出国)
〇ノンイミグラントB(就労)からノンイミグラントO(結婚)への変更:手続きに必要な期限が残っていれば可能(就労はワークパーミットが必要)
タイはタイ国内に居ながらのビザ変更はできない(一度出国する)ことを基本にしつつ、ビザの種類や残りの期限によっては(就労についてはワークパミットが取得できることを前提に)変更可能となっています。
事例1:「ノンイミグラントED」ビザ(留学ビザ)で大学で勉強していたが、卒業するのでタイの会社に就職することにした
→一度タイから出国し、在外公館(タイ大使館等)で「ノンイミグラントB」ビザ(就労ビザ)(90日)を取得してからタイに入国し、入国後ワークパーミットを取得して1年の「ノンイミグラントB」ビザに更新しなければなりません。
事例2:タイ人と結婚して「ノンイミグラントO」ビザ(結婚ビザ)を持って主婦としてタイで暮らしていたが、タイでいい仕事が見つかったので(婚姻継続のまま)就職することにした
→ワークパーミットが取得できれば、出国せずにノンイミグラントBビザへ変更可能
※そのまま(ノンイミグラントOのまま)ワークパーミット取得すればビザ変更せずに就労も可能なので、私としては変更のメリットは少ないと思います
事例3:タイ人と結婚して「ノンイミグラントO」ビザ(結婚ビザ)を持ってタイで主夫として暮らしていたが、離婚することになったので就職することにした
→ワークパーミットが取得できれば、出国せずにノンイミグラントBビザへ変更可能
※離婚手続きをしたら24時間以内に出国しなければならないため、離婚前にノンイミグラントBビザへ変更を済ませておく必要あり
事例4:「ノンイミグラントB」ビザでタイで働いていたが、タイ人と結婚し、主夫としてタイで暮らすことにした
→ ノンイミグラントBビザの期限が、変更手続きを完了できるだけ残っていれば(21日以上、できれば30日)、出国しなくても変更可能。ただし、退職日から7日以内に出国しなければならないので、退職前に結婚手続きを完了してノンイミグラントOビザの申請準備をしておく必要あり
※結婚後も同じ仕事を続ける場合は「ノンイミグラントB」ビザの維持可能。
ではタイの場合、滞在目的や活動内容が変わる(変わった)場合、どのタイミングで変更手続き、あるいは出国すれば良いのでしょうか?
ビザの残り日数が十分でない場合や、そもそも変更ができないビザの場合は一度出国するしかありませんが、この場合、「ノンイミグラントED」ビザなら卒業日や退学日から7日以内(卒業・退学前に7日間の延長申請した場合。延長をしない場合は即出国・ただし罰金で事後延長は可)、「ノンイミグラントB」ビザなら退職日から7日以内(退職前に7日間の延長申請した場合。延長をしない場合は即出国・ただし罰金で事後延長は可)、ノンイミグラントOビザなら離婚から24時間以内とされています。
ノンイミグラントBビザやノンイミグラントOビザで変更をしたい場合は、原則ビザ期限までの残り日数が21日以上(できれば30日)あれば変更申請可ですが、ノンイミグラントBビザでは滞在目的や活動内容が変わったら7日以内に出国なので、会社を辞める前に結婚手続き・ノンイミグラントOビザ申請準備をしておかなければ間に合いません。ノンイミグラントOビザの人が離婚した場合に至っては24時間以内に出国なので、離婚手続き前にワークパーミット取得からノンイミグラントBビザへの変更をしておく必要があります。
なお、留学や就労からの「7日間延長」についても、何もしなくても当然に7日間の滞在が許されているというわけでなく、卒業・退学・退職前にイミグレーションに行って理由を説明する文書をつけて申請をすると、帰国準備のために7日間の猶予をもらえるということ。つまり、本当は「即出国せよ!」となっているところ、「でも、帰る準備期間で7日だけあげる」・・ってことなので、日本のビザに携わっている者としてはずいぶん厳しいなあと思います。
ちなみに日本で卒業・退学・退職等をした場合、どれぐらい猶予があるかというと就労ビザや留学ビザであれば3か月です。日本人や永住者との結婚ビザで離婚した場合は半年です。これは先日の投稿「ビザ更新や変更で不許可!よくある理由「在留状況不良」って?」で触れた「通常は在留状況不良とされない期間」です。
しかも、日本は卒業・退学・退職・離婚等をしてから3か月なり半年なりが過ぎても、ビザ期間内なら即オーバーステイになるわけではありません。在留状況が不良ではありますが、滞在するだけならビザ期限が来るかビザ取消になるまでは合法滞在です。さらに言うと、日本は変更や更新が不許可になった場合でもビザ期間が残っていれば期限まで滞在できますし、審査中に期限が切れてしまった場合でも入管が審査している間は最大2か月はオーバーステイになりません。そして、審査中にビザ期限が過ぎた場合で、審査の結果、不許可になった場合も出国準備目的のビザとして通常30日がもらえます。
しかし、タイでは卒業・退学・退職に際し、あらかじめ7日間のビザをもらっておかないとオーバーステイと扱われますし、もらえても7日だけです。日本とは逆で、結婚ビザで離婚した場合は更に厳しい24時間です。
タイ人は時間に緩やかというイメージがあったので、これを知ったときは正直驚きました。
実務上はタイは罰金で許されることもあるようですが、それにしても、タイの外国人受け入れ・・特に外国人労働者の受け入れについての考え方(法律の作り)はかなりシビアと感じます。(ちなみに離婚後24時間をオーバーした場合は罰金+ブラックリスト入りになります)
いや、むしろ日本が緩いのかもしれません。
「日本は鎖国している」と言う人もいますが、少なくとも外国人を受け入れる法律(入管法)の作りは他国よりむしろ緩やかな方なのではないかと思います。
Author
-
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録
最新の投稿
- 2023-08-29Blogภาษาไทยชะตาที่ดีใจ
- 2023-08-27業務日報的めも嬉しい縁
- 2023-08-22業務日報的めもタイ大使館内労働担当官事務所の契約書認証が、予想に反して早く終わった話
- 2023-08-14業務日報的めも国際行政書士実務マスター講座(2023年第四講義:日本人の配偶者等)登壇