家族滞在からの死別定住

以前、外国人が日本人や永住権を持つ外国人と離婚したら、その人は、ビザをどうするかというテーマで長々と書いたことがある。

離婚したらビザはどうなる?①(日本人の配偶者等・永住者の配偶者の場合)

この時は、子供の有無と婚姻期間の長さによって、「定住者ビザへの変更」を検討するのが一般的ではあるものの、それはあくまで配偶者が「日本人や永住者」で、自身のビザが「日本人の配偶者等や永住者の配偶者等」の場合だ。一方、配偶者がいわゆる「就労ビザ」で、自身のビザが「家族滞在」の人は、定住者ビザへの変更可能性がない前提で書いていた。

ところが、一昨年の入管の審査要領に以下の記述が新たに加わっていた。

「家族滞在」の在留資格をもって在留していた者である場合は、配偶者の死亡までの直前の10年以上、本邦において正常な婚姻関係・家庭生活が継続していたと認められる者。


配偶者を失った家族滞在の人にも、継続在留の道が開かれたといえる。が、離婚では認められないし、死別まで日本で婚姻在留10年なので、ハードルは高い。10年以上良い状態で日本に住んでいたら永住権を取得している人も多いだろうから、自分のところでこの手続きをすることはないと思っていた。

しかし、現実にはいるもので、最近、この手続きをする機会があった。

その人は、日本での婚姻期間は15年。日本で生まれて小学校に通う子供もいた。

状況を聞く限り、上記審査要領で加えられた定住者への変更許可のチャンスは、このような人のためのものと思われ、十分に許可を得られるのではないかと当初は思った。

そこで念のため、審査要領の文言を確認しようと昨年版の審査要領を見てみると、上記の記述があったあたりが黒塗りになって見えなくなっている。

これは・・黒塗りになっている部分の範囲から、家族滞在からの変更の可能性がなくなったとは思えないものの、例えば10年という目安が15年、20年と変わっている可能性もあるわけで、お客様に自信をもって勧めるのが難しくなってしまった。

とはいえ、この方にはほかに日本に在留するための方法はないし、小学校に通う子供の言語は完全に日本語優勢という状態になっている。母子がそろって日本で暮らすには、やるしかない。

結果的には許可を得ることができ、母子ともに定住者としてこれまで通り日本で暮らすことができるようになり、自分も胸をなでおろしたのだが、申請の際の審査部門での事前相談では「厳しいと思いますよ」と言われていたので、非常に不安な申請であった。

顧みて、今回は良い結果になったが、今回は審査上プラスに作用する要素が盛り沢山であった(日本生まれの子を養育していること、日本での婚姻期間15年を超えている、などなど・・ほかにもいくつかあった)。そう考えると、今後、配偶者を失った家族滞在ビザの人が現れたとき、その人がこれほどまでのプラス要素を持っていることは少ないと思われる。そうすると、やはり今後もこの申請は不安を抱えながらするしかないのだろう。

ともあれ、この申請を通して、家族滞在からの変更という選択肢自体はしっかり残っていることは分かった。

Author

福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)
福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)入管手続専門行政書士(Certified Administrative Procedures Legal Specialists/Immigration Consultant)
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録

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