日本語学校留学生は就労ビザを取れますか?
タイ語(ภาษาไทย)記事はこちら
一昨日だったでしょうか・・電話で以下のような質問がありました。
今、日本の日本語学校で勉強している留学生ですが、来年卒業します。卒業後、日本で就労ビザは取れますか?
この質問は結構多いので、以前も書いたかも(このブログで書いてなくても、Facebookとかで書いたかも)ですが、あらためて。
留学からの流れで最も申請の多い「技術・人文知識・国際業務」ビザを前提に、取得が可能かどうか考えてみます。
まず私がこの人にお聞きするのは、
自分の国で大学か短大を卒業していますか?
です。
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、基本的に大学または短大卒業(学士or準学士)であれば、どこの国の大学であってもそれだけでこのビザの条件はクリアする可能性があります。なので、もし上記質問の答えがYesなら「ビザに当てはまる仕事内容で日本の会社と契約ができれば、ビザがもらえる可能性があります」となります。(あくまで「可能性あり」です。専攻と職種の関係が見られないわけではありません)
なお、日本の専門学校を卒業して「専門士」という学位を取得しても、このビザの学歴条件を満たすことができますが、日本国外の専門学校卒ではこのビザの条件を満たすことができません。また、日本国内の学校であっても日本語学校は専門学校とは扱われず、学歴条件を満たすことはできません。
タイの学歴について補足しますと、タイ人には後期中等職業学校修了者に与えられる「技術・職業教育ディプロマ(ประกาศนียบัตรวิชาชีพชั้นสูง略してปวส・ポーウォーソー)」という学位保持者が結構います。この学位は、高校(タイでは後期中等学校・3年制)、または前期中等職業学校(3年制・修了すると学位ประกาศนียบัตรวิชาชีพ略してปวช・ポーウォーチョー授与)卒業後、さらに後期中等職業学校(2年制)を終了すると得られる学位で、小学校からの就学年数をカウントすると14年になり、日本の高専に該当するようにも見えます。日本では高専卒は短大卒と同じ扱いですが、タイにおけるポーウォーソー保持者は4年制大学の3年時に編入学可能にもかかわらず、少なくとも現時点で日本のビザ基準ではポーウォーソーは短大と同等という扱いになっておらず、ビザ条件はクリアできません。もし、質問してきた日本語学校留学生が、高卒またはポーウォーソーで職歴もないなら、その時点でその人は来年日本語学校卒業時点での就労ビザ取得の可能性はゼロということになります。
ちなみに、文科省発行の書籍「世界の学校体系」によれば、タイにも短大(準学士)があるようですし、またネット上に準学士を意味する単語としてอนุปริญญา(アヌパリンヤー)という言葉も散見されますが、依頼者としては、まだタイの短大卒者を見たことがありません。
文科省の書籍に載っているぐらいなのであると思うのですが、人数が少ないのでしょうか・・
次に、日本語学校在学中の問い合わせしてきた人が大卒・短大卒ではない場合です。
この場合は経験の有無を確認するわけですが、国際業務(通訳翻訳や貿易実務、語学教師など)で3年の業務経験、人文知識(会計や法務、プロジェクトの企画立案など)と技術(システムエンジニアなど)は10年の業務経験(一部資格試験合格)があれば、その経験した業務で日本の会社と契約することで、このビザが取れる可能性が出てきます。
結論:大卒か、ビザに当てはまる業務経験が一定以上あれば、日本の会社と契約することで「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得し得る。逆に、大卒でなく職歴もない日本語学校生は日本語学校卒業時点で「技術・人文知識・国際業務」ビザは取れない。
「技術・人文知識・国際業務」ビザについてはわかった。
では、ほかのビザはどうなのか?
基本的に「経営・管理」ビザ(会社経営者のビザ)や昨年新しくできた「特定技能」ビザを除けば、日本のほかのほとんどの就労ビザも学歴かビザに合致する職歴(目安10年・一部の技術的職業では指定された資格試験合格)のいずれかを満たさなければならないのは同じです。
※ほかに要件が特殊なビザとして「技能実習」ビザと「興行」ビザがありますが、今回は割愛します
では、「経営・管理」ビザと「特定技能」ビザはどうなのか?
「経営・管理」ビザは、学歴と職歴の条件設定がないため、お金が用意できれば(資本金500万円)誰にでもチャンスはあります。しかし、審査で学歴や職歴を全然チェックしていないわけではありません。特に近年、このビザは審査が大変厳しいです。このため、私としてはお金と覚悟(意欲)としっかりとしたビジネスプランのある人にのみお勧めします。
「特定技能」ビザは、N4レベルの日本語能力と業務内容に関する試験合格が条件で、留学生から見ると比較的取りやすく見えますが、現時点では一部職種(建設業、造船舶用工業)を除けば、「特定技能」ビザは5年以上は期間更新ができません。つまり、最長5年で帰国しなければならないので、ずっと日本で暮らしたい人にはお勧めできません。
「5年日本で働ければ十分」というなら良いですが・・
なので、私としては日本でずっと暮らしたい学歴も職歴もない日本語学校留学生は「日本でどんな仕事をしたいのか、そのためにどんな勉強が良いのか」をしっかり考えた上で、日本国内で大学・短大、または専門学校へ進学することをお勧めします。
最後に、「大卒ですが、〇〇の仕事でビザ取れますか?(〇〇の仕事は当てはまるビザがありますか?)」のよくある質問と典型回答を列挙します。(タイ人を想定)
1、タイマッサージ師で就労ビザ取れますか?
→取れません
2、タイレストランで働けますか?
→経験で条件を満たす人は調理師なら可。ホールスタッフや皿洗いは「特定技能」ビザで可能性あり。ある程度規模が大きい店・会社でホールスタッフや皿洗い以外の業務の存在が立証できれば、「技術・人文知識・国際業務」ビザも可能性あり。
3、通訳翻訳や貿易業務、タイ語の先生として就労ビザ取れますか?
→「技術・人文知識・国際業務」ビザで可能性あり
4、システムエンジニアとして就労ビザ取れますか?
→「技術・人文知識・国際業務」ビザで可能性あり
5、コンビニで就労ビザ取れますか?
→フランチャイジーの店員では取れません(将来的には、特定技能ビザが取れるようになるかもしれません)
6、工場で就労ビザ取れますか?
→職種によって「特定技能」ビザの可能性があります。高度な知識が必要な技術職は「技術・人文知識・国際業務」ビザの可能性があります。
7、ホテルで就労ビザ取れますか?
→清掃やベッドメイキング、宴会での配膳業務などは「特定技能」ビザの可能性があります。外国人宿泊客の多いホテルではフロントスタッフや通訳翻訳業務なら「技術・人文知識・国際業務」ビザの可能性もあります。
8、キャバクラやホストクラブで就労ビザ取れますか?
→取れません。居酒屋なら「特定技能」ビザの可能性があります。
今回は以上です。
Author
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aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録
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