離婚したらビザはどうなる⑧(留学ビザへの変更)

昨年10月から書き始めた「離婚したらビザはどうなる」ですが、今回で最終回です。

前回は、離婚後に「定住者ビザ」への変更が困難な人について「就労ビザ」への変更、特に就労ビザのうち経営者のビザである「経営・管理ビザ」について、どうすれば取得可能性があるのか書きました。

今回は、今まで検討したすべてのビザに見込みがない場合、最後に検討する「留学ビザ」について見てみようと思います。

そもそもの話として、留学ビザは学生として日本に滞在するビザなので、このビザで日本に永続的に住むことを想定していません。家がお金持ちで一生仕事をしなくても暮らしていける稀有な人を除けば、いずれは就職して自立していくこととなります。

ここで、離婚後も日本に滞在するためにビザ変更をしなければならない人の多くは、自ら働き、生計を立てていくことを望んでいます。しかし、定住者ビザの取得が叶わなければ再婚でもしない限り「就労ビザ」しか道はなく、それも経営者になる道を除けば、学歴や職歴の条件を満たせなければ断念することになります。

そこで選択肢として登場するのが「留学ビザ」です。

経歴の不足を離婚後半年以内に補うことができるケースは極めて稀なので、現実的な方法としてはまず「留学ビザ」を得て日本の専門学校や大学に入り、卒業して学歴を得ることで就労ビザの条件を備え、「就労ビザ」へつなげていくということになります。

「留学ビザ」を検討するにあたっては、まず第一に学費・生活費が工面できるかどうかが最初のポイントになります。多くの人にとって、ここが最も高い壁かもしれません。(心情的に「今さら勉強でお金と時間を使いたくない」というのも含めて)
 
「留学ビザ」では、定時制の学校へ入って昼間はがっつりフルタイムで働いて学費と生活費を稼ぐというようなことはできません。(原則、仕事ができないビザです)
資格外活動許可を取得すれば週28時間のアルバイトはできますが、週28時間のアルバイトだけで学費や生活費すべて賄うことは現実的に不可能です。(資格外活動許可があっても、キャバクラやホストクラブなど、風営法で規定する事業所でのアルバイトは禁止されています)
このため、家族からの資金援助や婚姻中に働いて貯めた預貯金、あるいは離婚した日本人配偶者から得た慰謝料などがなければなかなか難しいということになります。(学費・生活費を賄えるかどうか、賄えるとしたらどのように賄うのかも、ビザ取得の際審査されます)
 
最も高い壁である「資金」クリアした場合、次の課題は、どの学校で何を学ぶか、そして希望の学校に入れるかです。
 
留学生の受け入れが可能な学校に入学し、そこで勉強するためのビザなので、入学可能な学校がなければなりません(学校の入学許可証が必要です)。学校によっては入試もあるので、これを突破する必要があります。
 
また、進学先として専門学校(専門課程以上)を選ぶ場合は、卒業によって「専門士」の称号が得られることが必要です。さらに専攻内容によっては卒業しても就労ビザ取得が事実上困難な場合もありますので、将来日本で就職して長期的に暮らしていきたいのであれば「専門士の称号が得られるか」「何を専攻するか」をしっかり考えて決める必要があります。
(単に入りやすい、学費が安いというだけで学校を選ぶと後々後悔することになります。)
 
さて、資金が確保でき、大学や専門学校に合格したとして、最後に入管が「留学ビザ」を許可してくれるかどうかですが、資金源にも疑いがなく(見せ金等でなく、ちゃんと確保できている)、学校の試験も合格して入学許可が出ている場合は許可される可能性は十分にあります。
 
なお、年齢が比較的高い人(概ね30代以上)については、ビザ審査の際「なぜ、今更学校で勉強なのか?」と疑念を抱かれやすいため、将来の自身のライフプランについても文書で説明したほうが良いでしょう。
 
最後にもう一つ気を付ける点は、専門学校(専門課程以上)や大学に入ろうとする場合、原則日本または本国で12年以上の学校教育を受けている(日本の高校卒に相当する学歴がある)必要があり、本国で中卒(高校中退含む)という場合、試験に合格する力があってもそのまま日本の大学や専門学校に入ることができません。
そんなとき、日本語学校入学を目指す人がいるのですが、通常のカリキュラムの日本語学校の場合は卒業しても学歴にカウントされません。このため進学のための学歴条件をクリアできないので、日本で大学や専門学校に進学して学歴を得、就労ビザを目指すという目的が達成できません。
学歴不足で大学・専門学校等への入学資格のない人が取り得る方法はいくつかありますが、私としては、日本語学校の中でも準備教育課程を設けている日本語学校を卒業すれば不足している学歴を補完することができるので、準備教育課程のある日本語学校への入学・卒業を目指すのが現実的と考えます。(日本語力も磨けます)
 
 
まとめると、離婚後の留学ビザへの変更は「資金と試験に合格する学力があり、(学歴条件を充足させていくことも含めて)明確なライフプランがある」場合は、有望な選択肢になると思われます。
 
 
以上、ここまで結婚でビザを取得している人が離婚することになった(離婚した)後も日本に継続在留したい場合に検討し得る方法(取得可能性のあるビザ)について見てみました。
 
現実的に困難な方法もありますが、「離婚した。もう日本にいられない」と短絡的に考えるのではなく、取り得る選択肢が本当にないのか、そしてどのようなことに留意してビザ変更の計画を立てるのか、まずは専門家へ相談することをお勧めします。

Author

福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)
福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)入管手続専門行政書士(Certified Administrative Procedures Legal Specialists/Immigration Consultant)
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録

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