3年ビザが欲しい(結婚ビザ編)

お客様からのよくある質問の一つが、「私はもう、1年ビザを〇回もらった。今度の更新で3年になる?」というもの

正直なところ、この質問に対しては「うーん、そろそろ3年もらえるかもしれないですね」「まだ、ちょっと厳しいんじゃないですか」のいずれかしか答えようがありません

1年ビザだと、毎年々々更新申請のために入管へ足を運ばなければなりません。また、申請後も結果が出るまで数週間待たなければならず、在留カードの受取りのために再度入管へ足を運ばなければなりません。3年ビザになれば、これが3年に1回で済むようになりますし、3年ビザを持っていなければ何十年日本に住んでも永住権が取れないので、早く期間3年のビザが欲しいというお気持ちはよく分かります

【日本人の配偶者等(結婚ビザ)】【定住者ビザ】【技術・人文知識・国際業務ビザ(就労ビザ)】【技能ビザ(就労ビザ)】などのビザは、多くの場合は最初は期間1年です

そして、平均2~3回更新すると期間3年になり、さらに最長5年までもらえる可能性がある・・というのが一般的な感覚だと思います

しかし、【2~3回更新】というのは、あくまで平均的な(しかも感覚的な)回数であって、この回数更新したら誰でも3年に伸びるわけではありません。

何がどうなったら3年、場合によっては5年にビザ期間が伸びるのか・・持っているビザの種類にもよりますし、基準そのものがあいまいなので「〇〇になったら、3年になります」と誰も断言はできないのですが、一応基準は公開されています。(「審査要領」という入管が審査の際の運用基準を定めた文書の公開部分に記載されています)

そこで、私の事務所で対応することの多いビザ【日本人の配偶者等】【定住者】【技術・人文知識・国際業務】【技能】について、その基準をかいつまんでご紹介しつつ、あいまいな部分については、経験的に把握しているポイントを書き出してみようと思います。

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まずは【日本人の配偶者等】ビザです

このビザは日本人と結婚した人と日本人の実子が該当しますが、ここでは日本人と結婚した場合に絞ります。なお、この基準は外国人永住者と結婚した【永住者の配偶者等】も同じです

実はこのビザは、ビザ期間として【6か月】もあります。しかし6か月ビザは【離婚調停中】【どちらかが離婚の意思を明確にしている】【滞在予定期間が6か月以下】・・という限られたケースだけで、通常は1年・3年・5年のいずれかです

【日本人の配偶者等】ビザをもらうと最初は1年という人が多数なのですが、これはこれで基準があります。というか、6か月を除いて【1年の基準に当たらない】場合に1年が3年に伸びるか、【5年の人が基準を満たせなくなった】場合に5年が3年に短縮されるということになっています。そこで、1年から3年にステップアップするためにクリアすべき【1年】の基準を見てみようと思います

①家族構成、婚姻期間を取りまく諸状況からみて、婚姻および配偶者の身分に基づく生活の継続性を1年に1度確認する必要があるもの

②滞在期間が6か月を超え1年以内

 

②は明確ですね。そして2回目以降の更新はすべて②をクリアしているはずなので、2回更新しても1年のままという場合は①をクリアしていないということになります。
が、①は非常にあいまいです。何をもって【1年に1度確認する必要がある】のか?
つまり、どうなれば【入管が1年に1度確認する必要がなくなる】のか?

残念ながら、明確に書かれた資料はありませんので、私の経験から【1年に1度確認する必要がない】と判断されやすくなるポイントを以下、書いてみます

A.ビザを持っている人と日本人配偶者が同居している

B.生活していくのに十分な収入があり、安定している

C.日本から長期間出国していない

D.納税義務を果たしている

E.届出義務を履行している

F.学齢期の子供がいる場合は、学校に通わせている

 

Aについては、同居していない場合は婚姻生活の実態がないことが疑われますし、さらにビザを取ってすぐ別居だと、そもそも結婚自体が本物だったか疑われ、更新が不許可になる可能性もあるので、3年に伸びるどころではありません。子供がいて、教育のため日本人配偶者がやむを得ず単身赴任するような事情については考慮されますが、いずれにしても資料を用意した上でしっかり説明する必要があります。

同居しているかどうかは、通常は住民票で確認していると思われますが、入管に何らかの情報提供(タレコミ)があったり、実態調査班が自宅を見に行ったりということで別居が判明する場合もあります

Bは、通常住民税の課税証明書で確認します。日本人配偶者が働いている場合でも、外国人本人が働いている場合でも、共働きで合算でも構いません。しかし、一体いくら収入があれば生活していくのに十分と言えるのか、同等以上の年収を何年間維持すれば安定していると言えるのか・・これはなかなか難しく、入管も明言はしません。【日本人配偶者等】ビザを新規で取得するための年収の目安としてよく引き合いに出されるのが、国民年金の支給額です。これが1人当たり年間約78万円ですので、夫婦2人だけの生活なら156万円・・このあたりがビザ新規取得の年収最低ラインと思われ、逆に言えば、国としてこの金額を上回ったら生活不十分だとは言えないはずのラインです。しかしこれは新規ビザ取得の場合で、期間1年のビザが3年に伸びるにはこの金額ギリギリだと微妙というのが私の感覚です。(ほかのポイントから全体的な状況が良いと判断されれば、3年になる可能性はあります)

私の経験的、感覚的なものでいえば、世帯年収で180万ぐらい、できれば200万以上を2~3年維持していればと思います(なお、収入ダウンの転職はネガティブに判断される材料になります)

ちなみにですが、入国して早い段階で生活保護になると更新が不許可になる場合もありますし、基本的に生活保護の状態では3年に伸びることはありません

Cについては、どれぐらいの期間、日本から出国していたら「長期出国」として更新の際の審査上不利になるかは明確な資料はありません。ただ、1人で一時帰国しているならその間は同居していないわけで、上記Aを欠くことにもなりますし、「日本にいないなら、そもそもビザいらないでしょ」という話にもなります。このような場合は、3年に伸びるかどうかという以前に、1年を維持するために更新申請の際は理由書等をつけて長期出国の理由を説明したほうが良いでしょう。私の感覚では3か月を超えたあたりから要注意で、理由書の添付をお勧めしています。

なお、これは日本人が長期出国をし、外国人配偶者が日本に残っている場合も同様です。入管は日本人についても出入国の状況をすべて把握しており、このようなケースは3年に伸びる可能性は低いです(3年の人が1年に短縮された事例があります)

また、夫婦一緒に長期出国している場合も3年には伸びにくいです。これは夫婦の同居状況や生活状況が確認できないことが大きいと思われますし、こちらも「そもそもビザいらないでしょ」と言われるケースになってきます

次にD~Fですが、これ満たしていないと5年から3年に短縮される基準でもあります

もともと5年の人がこれを欠いても3年ならもらえるというなら、これを欠いていても1年から3年に伸ばしてくれてもいいんじゃないか」とも思うのですが、やはり【欠いたら短縮】されるようなポイントは3年に伸びる(ステップアップする)ためには最低限満たすべき・・ということなのだと思います

なお、Dについては、家族構成等によっては「非課税」でも3年に伸長されることはあり得ますが、滞納はだめです。

Eは離婚・再婚をした場合に14日以内にする届出です。(就労ビザなら退職・入社時)
就労ビザでの事例ですが、数年前に転職した時に届出をしていなかったために、年収1000万越えでしっかり納税しているにもかかわらず、ずっと1年更新だったという人が実際にいますので、遅れてしまっても必ず届出はするようにしましょう(この人は、届出をした後の更新で3年になりました)

なお、認識されていない人が多いのですが、実はこの届出を怠った場合は罰則があります(20万円以下の罰金)
厳格に運用されれば期間が3年にならないだけでは済まないので、要注意です

Fの学齢期の子供とは、義務教育を受けなければいけない年齢の子供のことです。きちんと子供を学校に通わせ、更新申請の際は学校から在学証明書を取得して提出します

最後になりましたが、参考までに3年から5年にステップアップするための基準をご紹介します。

①~④については、5年持っている人がひとつでも欠いたら3年に短縮となります。②の公的義務は納税のほかに健康保険や年金加入・納付ということです。⑤はあいまいですね・・まずは①~④をしっかりクリアし、維持していくことが肝要と思います

①届出義務を履行している

②各種公的義務の履行

③学齢期の子供がいる場合は、学校に通わせている

④納税義務を果たしている

⑤家族構成、婚姻期間を取りまく諸状況からみて、婚姻および配偶者の身分に基づく生活の継続が見込まれるもの(婚姻後の同居期間3年以上続いている)

 

次回は【定住者】ビザについて見てみます

 

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Author

福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)
福島(Fukushima) 竜太(Ryuta)入管手続専門行政書士(Certified Administrative Procedures Legal Specialists/Immigration Consultant)
aroi行政書士事務所 代表行政書士(東京都行政書士会所属)
アジアランゲージセンター(株) 代表取締役
群馬県渋川市出身
大東文化大学国際関係学部(タイ語選択)卒業後、タイ・バンコクに2年間駐在
日本語教師・日本語学校事務(留学ビザ手続担当)を経て2009年10月行政書士登録

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